「当社の建物は建築コストを極力抑えているから、他のメーカーよりも安く出来ますよ」と謳い文句にするメーカーが増えています。
昔から「日本の住宅は世界で一番高い」と言われ続けてきました。バブル崩壊後、その傾向はやや下方修正されたものの、それでもまだ高いと言わざるを得ません。
皆さんは、大手ハウスメーカーの建築原価をご存知でしょうか?
現在、概ね坪15万円です。
日本の建築技術は高レベルなので、短期間で建てられるような 軽量鉄骨プレハブ(型式認定)などの効率的な工法を生み出しました。
それを工場で大量生産し 大量販売しているので、実は皆さんの想像以上にずっと原価は安いのです。
ところが売価は45万円から60万円ほどにもなります。
これは 国際的に見ても日本だけの特殊な「販売方法」が主な原因です。
大手ハウスメーカーでもトップクラス(一流)のS社ですが、大量販売のためにテレビ宣伝ばかりしています。カタログやパンフレットなどもお金が掛かっていて かなり立派なものです。
そしてこの1社だけで 約6000人もの営業マンが在籍し日々営業活動しています。
さて ここからが問題なのですが、大量販売するためには、大量生産しなければなりません。
ですから建築の工法は どこの会社も軽量鉄骨(プレハブ)や重量鉄骨・木造ばかりを工場で生産して、現場で組み立てる方式がほとんどです。
工期が約3倍もかかる 鉄筋コンクリート造の建物はどこの大手メーカーも販売したくないのが本音です。
3倍も工期がかかれば 同じ1年間の間に3分の1しか生産できませんよネ。
そうすると 売上も3分の1になってしまうので、テレビ宣伝に頼る大手ハウスメーカー・大手アパート会社は倒産してしまう構造に陥っているのです。
このようなことは日本以外では全く考えられません。
大企業の勝手な都合で 大量生産された賃貸住宅が、本当に入居者様の快適な住いになっていれば、文句はありません。しかし、上下階の音と臭いや 階段の騒音など、防音性の低いプライバシーのない生活を強いられるようでは、さながら「欠陥住宅」と言われても仕方がありません。
それに比ベ 戸建賃貸は防音性や気密性に優れ、賃貸住宅としても最も適した建物だと思うのです。が、ハウスメーカーや大手アパート会社の都合で ほとんど建てられていないのが現状です。もし建てたとしても異常に高い建築費となってしまいます。
さて ここからは、原価15万円のものがどうして45~60万円になるのかを説明します。
単刀直入にお伝えすると 15万円に1.3倍を4回掛けると42万8千円です。
(1.4倍を4回掛けると57万6千円になります。) これが大手メーカーの価格の構造です。
原価に本社経費を1.3倍。工場経費1.3倍。県別営業拠点の経費1.3倍。施工部門の経費1.3倍です。どうしても 大企業は経費のかかる構造になってしまうのです。
(単純に1.3倍ではなく、1.2倍や1.4倍の場合もありますが、この計算方法自体は間違ってはいません。)
これはもう 業界では隠しようのない事実として、業界関係者の間では常識になっていることでして、知らないのは一般消費者だけでしょう。
ローコスト住宅を さもブランド住宅だと言って(国際的にも)高値で売っている。
これが日本の住宅業界の現状です。
ハウスメーカーという概念が 海外では無く、地域の職人(大工)さんたちが 消費者から直接工事を請け負うので、原価に近い値段で家を建てられます。
建築コストが高くなれば、オーナー様の負担額が 当然増えます。
そして オーナー様は家賃を高めに設定することで、その負担を減らそうとするのです。
これが 日本の賃貸住宅が、たとえ劣悪な物件であったとしても 家賃が高い理由の1つです。
「家賃を(相場のそれより)高めに設定すれば、建築にかかった費用はすぐに回収できますよ」とメーカーの営業マンは言うでしょう。しかし、1点だけ忘れてはならないことがあります。
日本の住宅は住めば住むほど 建物の価値が下がるので、常に入居者を獲得するには家賃を下げ続けなければなりません。近くに新築のライバル物件が完成したなら、かなり値段を下げないと入居者様は確保できないでしょう。
いくら家賃を高く設定して高い建築費をまかなったとしても、金融機関から借りた借入金を完済する前に、家賃収入が減少して持ち出しになってしまうものです。
この構図で儲かるのは、実は建物を高い値段で請け負ったハウスメーカーだけです。
中身はローコスト住宅なのに 非常識な金額で売り付け、売った後は管理を別会社に移してしまい、入居者確保に責任を負うこともしません。
オーナー様が「空室が増えてしまった」といえば、「家賃を下げればいいんじゃないですか?」とハウスメーカー系列の管理会社は 事も無げに言います。端からオーナーさんの生活や返済の事など 考えていないのです。
この構図を打開するのは いたって簡単です。真にローコストで賃貸住宅を建て、家賃を最初から安く設定する。
そして借入金を減らして月々の返済をそれに応じて少なくすれば、地主様やオーナー様の賃貸経営は上手くいくのです。
そのためには建築費の坪単価は絶対に安くすること。
そして「安かろう、悪かろう」ではなく、入居者様の望む 高品質で快適な賃貸住宅を建てることです。